マレットゴルフが卒業論文に2001年春、私のところに、1通のメールが届きました。それには、「信州大学の学生ですが、卒論をマレットゴルフについて書きたいので、協力していただけないでしょうか。」と書かれていました。卒論とマレットゴルフ、あまりピンとこない組み合わせに、最初はとまどっていましたが、何度かメールを重ねるうちに、彼の熱意が伝わり、こんな青年の力こそ、これからのマレットゴルフにとって、必要なものではないかと思うようになりました。 こんないきさつで、私は、5月連休明けに彼と会うことになりました。 その時、私は、彼に会って最初にする質問を決めていました。 5月12日、約束どうり、彼と会いました。彼は、信州大学人文学部、文化コミュニケーション学科の学生で、千葉県出身の「松島」君という青年でした。 メールを重ねていた私には、初対面という気はしませんでした。 お互いに挨拶を済ませた後、私は、予定どうり、彼にこう聞いたのです。「なぜ、マレットゴルフを卒論に選んだのですか?。」これが私の最初の質問です。 彼の答えは、こんなふうでした。 「私は、千葉県から信州大学に入学し、長野県に来ました。こちらに来る前は、「マレットゴルフ」について全く知りませんでした。ですから、信州特有のスポーツかなと思ったくらいです。一方、信州出身の同級生は、皆、「マレットゴルフ」を知っていました。 今、4年を経過して、「マレットゴルフ」を知るに従って、その、広がりの速さに興味を持ちました。サッカーにしても野球にしても150年近い年月を経てメジャーなスポーツとして発展してきました。それに対し、「マレットゴルフ」は、ここ20年、創始者生存中にこれだけの広がりを持ったスポーツになったんですから驚異的です。日本の代表的スポーツになりうる資質を持ったスポーツではないかと思います。」。そして、「マレットゴルフ」の良い点として、構えてするスポーツでなく、気楽にできること。ステージが広いこと。をあげていました。また、「世界大会があるようですが、世界的にどの程度の広がりがあるのか調べてみたい。」 こんなふうに、彼の考えを熱っぽく語ってくれました。 私は、こんな彼を見ていて、彼の「卒論」を是非読みたいと思いました。今の、青年がとらえた「マレットゴルフ像」を見てみたいと思っています。 出来得ることならば、このHPに掲載すること、それが私の願いです。愛好者の皆さん期待して待っていて下さい。 卒業論文完成この1年間、「松島君」は、卒論完成のためたいへんな努力を重ねてきました。数10回にのぼる、県内全域への調査・取材活動、そして論文作成。これらを通じて、彼は、「マレットゴルフ」の現在、過去、未来になにを見、そしてどのように感じたのでしょう。私は、今回、彼の好意により、その主な内容をこのHPに掲載する許可を得ました。原稿用紙60枚に及ぶ長大な卒業論文の概要です。掲載するに当たって概要の中の、企業名及び個人名は、すべて仮名としました。私達、「マレットファン」にとって酸いこと、甘いこと、様々な指摘がありますが、これからの「マレットゴルフ」の発展のために生かすことが できればと思っています。
2001年度信州大学人文学部文化コミュニケーション学科卒 序論 なぜ、マレットゴルフなのか?第1章 マレットゴルフ、その歴史と現在[総括]第2章 マレットゴルフ組織の発生、現在、今後[総括]第3章 マレットゴルフの経済的側面[総括]第4章 マレットゴルフ、そのプレイヤーの意識[総括]第5章 結論 マレットゴルフはどこに行くのか[総括]序論 なぜ、マレットゴルフなのか?[総括]マレットゴルフは、スティック(クラブ)とボールを使って、決められた打ち出し地点からホール(カップ)へ、できるだけ少ない打数で入れる事を競うスポーツである。 マレットゴルフは長野県特有のスポーツであり、いわゆるニュースポーツの代表でもある。この2点からマレットゴルフはおもしろい研究題材になると考え、今回研究してみた。今回の研究では主に組織・業者・プレイヤーという異なった立場でマレットゴルフに関わっている人達から話を聞く事によって、マレットゴルフの発生から現在までの経緯、今後の展開、抱えている様々な問題について考えていきたい。
第1章 マレットゴルフ、その歴史と現在[総括]第1節 マレットゴルフ(長野式)の発生からの流れ[総括]マレットゴルフは長野県において行政の力で生み出され、最近まで行政の力によって普及されてきた。行政による普及は大きな効果をあげており、プレイヤー数の増加はもちろん、マレットゴルフのコースを持っている小学校もあるほどである。しかし、最近行政はソフトバレーやキンボールといったマレットゴルフ以外のスポーツの普及に力をいれており、マレットゴルフの普及に関してはマレットゴルフ連盟やマレットゴルフ協会にルールやコース等について提言するだけであり、一歩引いた立場にいると言える。 第2節 マレットゴルフをめぐる長野県と福井県[総括]現在、マレットゴルフは長野県と福井県の両方で偶然に発生したことになっている。このことは、読売新聞にも本家論争として取り上げられている。同じようなスタイルのスポーツがほぼ同時期に発生するのはニュースポーツでは決してありえないことではない。ニュースポーツは既存のスポーツに少し手を加えて作られる事が多い。また、マレットゴルフのスタイルは誰もが容易に考えつくものである。マレットゴルフの発生地は長野県、福井県の両県であり、それぞれを長野式、福井式とすることは妥当といえる。現在では、長野式、福井式といった区別はなく、マレットゴルフという一つの競技として行なわれている。
第2章 マレットゴルフ組織の発生、現在、今後[総括]図のようにマレットゴルフ連盟とマレットゴルフ協会は元々「マレットゴルフ協会」という一つの組織であった。また、「長野県マレットゴルフ協会」は2000年に「長野県マレットゴルフ連盟」と合併して「長野県マレットゴルフ連盟」となった。このため「日本マレットゴルフ協会」は長野県の支部を失った形になっている。 マレットゴルフ組織の変化
(「全日本マレットゴルフ連盟」「長野県マレットゴルフ連盟」はマレットゴルフ連盟グループ。「日本マレットゴルフ協会」「長野県マレットゴルフ協会」はマレットゴルフ協会グループとする。) 第1節 マレットゴルフ連盟[総括]マレットゴルフ連盟は現在マレットゴルフをチャンピオンスポーツとして全国に普及させようとしている。全国組織としては17の県に3万人以上の会員がいるが「長野県のマレットゴルフ」という考え方を大事に考えている組織でもある。 第2節 マレットゴルフ協会[総括]マレットゴルフ協会は現在マレットゴルフをどちらかというとレクリエーションスポーツとして全国に普及しようとしている。全国組織としては15都府県にメンバーがいる。組織の設立当初からマレットゴルフの全国化が目的であり「長野県のマレットゴルフ」という考え方はあまりない。 第3節 マレットゴルフ連盟とマレットゴルフ協会が一つになる日[総括]連盟、協会共にマレットゴルフの全国的な唯一の組織となる事を望んでおり、その為に現実的な方法は両組織の合併である。両組織は長野県内では2000年12月12日に合併に成功している。この合併は多くのメリットがあったが多少の問題を残す結果に終わったのも事実である。問題解決の為には、両組織が互いに自らの正確な情報を伝え、互いを信頼しあう必要があるだろう。両組織の合併は両組織にはもちろんプレイヤーにもメーカーにも利益のある事である。両組織が全国的にもできるだけ速く合併する事が望ましく、そのためには名称の異なる新たな組織を立ち上げる等も一つの手段であると考える。 第3章 マレットゴルフの経済的側面[総括]第1節 「S」と「Sスポーツ」[総括]「S」、「Sスポーツ」共にマレットゴルフがスポーツとしてスタートした時から用具を製作している老舗である。現在、「S」はマレットゴルフ連盟側(賛助会員である)、「Sスポーツ」はマレットゴルフ協会側(設立に関わっている)である。関わっている組織は異なるものの、両社共にマレットゴルフの普及には積極的である。また、今回の調査で世間で言われている程には互いに意識してはいないということがわかった。両者は認定制度等について考え方に差はあるが、マレットゴルフ連盟とマレットゴルフ協会よりは近い関係にあると言えるのかもしれない。 第2節 マレットゴルフ連盟と賛助会[総括]マレットゴルフ連盟の後援組織が賛助会である。賛助会は企業と連盟との間のパイプ役として存在しており現在12社が加盟している。賛助会への加盟についてはメリットが感じられないという声も外部からある。また、加盟員の役割についての懸念の声も出ている等、連盟と賛助会との関係や賛助会のあり方等は今後考えていくべき問題であると言えよう。 第3節 マレットゴルフ協会と「Sスポーツ」と認定制度[総括]マレットゴルフ連盟とマレットゴルフ協会との間で大きく異なるものの代表格が認定制度の有無である。この有無が「Sスポーツ」が賛助会に入らない理由の一つにもなっている。現在、マレットゴルフ協会が採用している認定制度は主に下のようになっている。
第4節 クラブの問題[総括]現在マレットゴルフはメーカーにとってあまり儲からないらしい。その理由としてクラブの壊れにくさが上げられる。高価なクラブでも5万円以下というマレットゴルフ業界だが一般的にクラブは5年程もつ、これでは利益が出にくいのは当然と言えよう。この現状打破にはプレイヤーに用具を買ってもらう風潮を作らなければいけない。その為にも、マレットゴルフ連盟やマレットゴルフ協会が用具等の規制についてメーカー側と話し合って見直し、それによってメーカーが商品開発をしやすい土壌を作ることが必要であろう。
第4章 マレットゴルフ、そのプレイヤーの意識[総括]マレットゴルフのプレイヤーをマレッターという。この章では異なったスタイルでマレットゴルフを楽しんでいる3人のマレッターに話を聞いていきたいと思う。3人の紹介は以下の通りである。 第1節 なぜ、マレットゴルフを始めたのか[総括]3人共偶然にマレットゴルフを始めていて、特に意図的にマレットゴルフを始めたわけではない。また、3人共マレットゴルフを始めてから以前に行なっていた他のスポーツを行なわなくなった。つまり、3人共がマレットゴルフに魅力を感じていると言えるだろう。そして、3人が共通して特に感じている魅力として自然の中でのプレーが上げられていた。 第2節 現在、マレットゴルフの組織と、どう関わり、今後の組織をどう思っているか[総括]この質問に対する答えはそれぞれの立場で全く異なっていた。仲間内でのみ楽しんでいるI氏は組織に全く関心が無く、ホームページ等を製作しているT氏は自分の問題として捉えてはいないが組織について多少の関心を示し、大会に参加する事の多いO氏は組織について大きな関心を持っていた。つまり、マレットゴルフの組織は大会に参加しない人にはあまり魅力的ではない(興味を持ってもらえない)ようである。「マレットゴルフ人口の増加」=「マレットゴルフの組織の加入者の増加」と考えるのであれば、現状は危険である。マレットゴルフの持っているレクリエーションスポーツ、生涯スポーツとしての側面をもっとアピールしていく必要があると言えるのではないだろうか。 第3節 クラブはどのような物を使用しているのか[総括]クラブの本数や価格について聞いたこの質問の答えは大会に出る人とそうでない人とで答えが完全に別れた。その理由の一つとして、大会に出たければクラブを買わざるをえない状況が存在しているということが上げられる。各メーカーはクラブの普及の為に自社が主催する大会ではその会社のクラブを使用する事を義務付けているからである。しかし、この事で一気にクラブの売り上げが伸びるかというと一概にそうとはいえない。様々な大会に参加するのは上級者が多く1本のクラブの使用年数が長いからである。メーカーがクラブの売り上げを伸ばす事を考えるならば、初中級者向けの比較的安価なクラブの製作、販売に力を入れてプレーヤー層の底辺を拡大する事を目指すのが良策と思われる。 第4節 マレットゴルフとは何か[総括]今回お話を伺った3人のマレッターにとってマレットゴルフは大事なものであるようだ。マレットゴルフは現状では様々なプレイヤーの要求に答えることの出来るスポーツであると言えるのではないだろうか。つまり、現在のマレットゴルフの姿をしっかりと守っていく事が今後のマレットゴルフの普及の成功のカギとなるように感じられた。マレットゴルフ連盟やマレットゴルフ協会には今後もプレイヤーの声をしっかりと聞きながら普及に努めていってもらいたいと思う。
第5章 結論 マレットゴルフはどこに行くのか[総括]今回の調査でマレットゴルフに関係する様々な人に会ったが、その全ての人達に共通して言えるのが「みんな、マレットゴルフが好きなんだ。」ということである。その根元では一致しているようであった。 マレットゴルフが現在抱えている大きな問題は普及、それも全国普及である。自分の好きなものを他の人に伝えたい、仲間を作りたいというのは自然な欲求であると思う。しかし、私はここで問いたい。全国的なスポーツになることがマレットゴルフにとって本当に望ましいことなのだろうか。マレットゴルフは地方発のスポーツであり、そのようなスポーツが全国的なスポーツになることは本当に素晴しいことであると思うが、そのスポーツの「かたち」だけが伝わっても「らしさ」が伝わらなければ、それは本当に伝わった事にはならないのではないだろうか。 では、「マレットゴルフらしさ」の為に大事なことはなんであろうか。それはマレッター達も皆言っていたが、「自然の中でプレーすること」であろう。長野県という自然豊かな場所だからこそマレットゴルフは生まれたのである。マレットゴルフと似たプレースタイルのスポーツは多く存在する。そのなかでマレットゴルフをアピールしていく為にも「豊かな自然の中でプレーする」という本来の姿を大事にすべきである。そのためにはコースの設置場所にはこだわる必要がある。自然豊かな中に、広くて起伏のあるコースを造れる場所は限られる、だとすれば、なにも無理して全国に出ていく必要はないのではないだろうか。 マレットゴルフにとって長野県のみで盛んなスポーツであることは決してマイナスではない。無理に全国に出て行って「マレットゴルフらしさ」がなくなっていくことのほうがマイナスであると言えるのではないだろうか。 まずは、長野県内で着実に「マレットゴルフらしさ」を高め、「マレットゴルフ文化」をしっかりと作ってから、その後で長野県に似た条件を持つ場所に徐々に普及していくべきである。全国に目を向ける前に、まずは長野県でマレットゴルフ人口を増やすべきである。それをスムーズに行なっていく為にもできるだけ速いうちにマレットゴルフ連盟とマレットゴルフ協会が一つになって、発言力を高めることが望まれる。 マレットゴルフにおいては、その軸足を常に長野県に置いておく事がスポーツとして生き残っていく事、発展していく事のポイントである。全国展開していく事にそれほどこだわらずに「長野県のマレットゴルフ」に今後もこだわっていく事が望ましいと考える。
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